この数年、当社では、「日本で働く外国人の方を対象としたビジネスマナー研修」についてのご相談やご依頼をいただくことが増えてきました。私が担当している企業研修や公開セミナにおいても、外国人の方の受講が増え、毎回数名の方が受講してくださっています。厚生労働省によると、日本で働く外国人は2025年10月末時点で約257万人となり、過去最多を更新しているそうです。このデータが反映するように、まさに、日本で働く外国人が増えていることを私自身も日々の研修現場で実感しています。
私は、外国人の受講者がいらっしゃると、できるだけこちらから話しかけ、その時にお伝えしている言葉があります。「日本で働くことを選んでくださって、ありがとうございます。日本へようこそ!」という、歓迎の言葉です。なぜ、私がこの言葉を伝えたいかというと、生まれ育った国を離れ、慣れない日本語を話し、日本の職場のルールや人間関係に戸惑いながら過ごしているのではないかと相手の気持ちを想像し、その気持ちに寄り添いたいと思うからです。言葉も文化も習慣も違う日本で働くということは、きっと大きな決断だったと思います。そのことに、私はまず「ありがとうございます、ようこそ」という感謝と歓迎の気持ちを伝えたいと思っています。
皆さんに、「日本に来ることになったきっかけ」をお尋ねすると、本当にさまざまなお話をしてくださいます。「日本の文化に興味があった」という方、「学生時代に母国で日本語を学んだことで、日本に興味を持った」という方、「母国では就職先が少なかったから」と話してくださった方もいます。中には、毎月のお給料から母国で暮らすご家族へ仕送りをしながら、日本で働いている方もいらっしゃいます。お話を伺うたびに、一人ひとりがそれぞれの想いや事情を抱え、母国を離れ、日本を選んで働いているのだということを感じます。そして、できるだけ会話する時間を作って、「日本で働いていて、困っていることはありませんか?」「分かりにくいと感じることはありませんか?」とお聴きし、その課題を当日の研修に反映したり、必要に応じて個別でフォローするようにしています。
さらに、外国人の受講者の皆さんにビジネスマナーをお伝えするときには、日本の文化や考え方にも触れるようにしています。私自身、これまで剣道や茶道を学んできた経験がありますので、「剣道におけるお辞儀の意味」「茶室の中で相手を敬うことの大切さ」など、剣道や茶道における考え方についてお話しすることがあります。もともと日本の文化に興味を持っていらっしゃる外国人受講者の方が多いこともあり、剣道や茶道のエピソードは大変興味深く聴いてくださいます。このように、研修では、ビジネスマナーの型だけでなく、その背景にある日本文化についてもお伝えし、日本で働く上で必要なビジネスマナーやコミュニケーションについて理解を深めていただくようにしています。
ただ、当然ですが、日本の文化や価値観を外国人の方に知っていただくだけでは十分ではないと思っています。一緒に働く私たち日本人も、相手の育ってきた国の文化や価値観を知ろうとすることが重要だと考えています。お互いの「違い」を、どちらかが「正解」・「不正解」と決めつけるのではなく、「そういう考え方もあるのですね」と理解し、双方が歩み寄ることによって、良好な異文化コミュニケーションが始まるのではないでしょうか。
これから企業に求められるのは、外国人労働者を「採用し雇用する」ことだけではなく、一人ひとりが安心して働き、本人の持っている力を発揮し、日本人も外国人も共に成長できる職場をつくることだと私は考えています。そのために、当社では今後さらに、異文化コミュニケーション、日本の文化や価値観、そしてその背景にある「心のあり方」についてお伝えできる研修プログラムを進化させていきたいと考えています。また、私自身も日本語教育・異文化コミュニケーションについての学びを深め、外国人の方々が日本で働くうえで本当に必要としていることを理解し、研修を通して、皆様のお役に立てるよう精進していきます。
そして、当社の研修を受講してくださった外国人受講者の方に「日本に来てよかった。」「日本で働いてよかった。」と感じていただくことができたら、何より嬉しい私の喜びです。